30代での転職は、基本的に即戦力になることが求められます。
つまり、前職で経験と実績をたくさん積んだ人であればであるほど転職がしやいわけです。
しかし、営業職のように、目に見える数字として実績が残った人はまだしも、事務職など、目に見えない実績のある人は、自分自身の能力と経験を証明するのはなかなか難しいことでしょう。
そんな時に、いままで取得した資格は自己アピールの武器になります。
今回は30代の転職に役立つ資格を紹介していきましょう。
30代が転職しやすいって本当?
2018年現在は空前の転職ブームといわれています。
景気がよくなったのに、会社の規模をさらに拡大していくための人材が足りなかったり、また慢性的な人手不足に悩んで、かろうじて会社の運営が保たれていたりするなど、人材の確保が困難な会社は世の中にたくさんあります。
そこに、ビジネス経験とスキルの持ち主で、働き盛りの30代の方々こそ、企業に求められています。
とくに、30代の管理職経験者への需要がとにかく高くて、転職したいならどこにでもすぐ転職できるといえるほどです。
しかし、転職が空前の売り手市場だといっても、誰にでもその「売り手」になれるわけではなくて、特に30代の転職者にとっては、即戦力になれるかどうかは転職活動のカギになっています。
20代の第二新卒はまだポテンシャルで自己PRができるのですが、30代の転職は基本的に経験とスキルでしかアピールできないため、そこがだめだったら30代の転職はうまくいくはずがありません。
そのため、「30代が転職しやすい」という説は、半分正解、半分不正解といってもよいでしょう。
先ほども述べましたが、もし目に見える実績のない30代の転職は、転職活動を少しでも有利に進めるために、資格の取得が強くおすすめします。
もちろん、世の中に資格というものは山ほどあって、その全部が転職に有利とはいえないため、今回は特におすすめの資格をピックアップして紹介していきます。
30代の転職者におすすめの資格とは?
資格といえば、日商簿記やTOEICを想起する方が多いでしょう。
しかし、日商簿記とTOEICは実は資格として当たり前すぎて、30代の方々もちろん、20代の新卒でもこれらの資格を持っている方もたくさんいるため、「もっているのは当然だ」ということになっています。
したがって、資格で差をつけたいなら、もっと専門性の高い資格を取得する必要がでてきます。
具体的には以下の資格は特におすすめです。
- 宅地建物取引士
- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- ケアマネージャー
- ファイナンシャルプランナー
宅地建物取引士
宅地建物取引士は、通称「宅建」と呼ばれている資格で、主な業務としては、不動産の売買、賃貸における仲介業務を行います。
不動産契約では、高額な金額が動くため、トラブルを回避するために契約書類の署名から押印、契約事項の説明までの手続きは宅地建物取引士を介さないと行えないことは、法律によって規定されています。
ちなみに、宅地建物取引士のような資格は業務独占資格と呼ばれて、その地位は国によって保護されています。
そのため、一度取得すればその資格で一生暮らしていけるでしょう。
宅地建物取引士の年収
業務独占資格の持ち主はおおむね高収入が望めます。
とくに近年不動産業界の景気も非常によくなってきて、その分、宅地建物取引士への需要も高まっています。
宅地建物取引士の資格を取得したら期待される平均年収は
が目安です。
取得難易度:中
不動産業界では、従業員の5人に1人は「宅地建物取引士」の資格を持っていなければならないため、非常に重要な資格になっています。
受験者は毎回20万人を超えており、合格率は約15%で、合格に必要な正答率は約7割となっています。
日商簿記2級の合格率が20%前後といわれているため、日商簿記2級よりやや難しいと考えればよいでしょう。
社会保険労務士
社会保険労務士は企業の労務や社会保険に関するコンサルティングを行います。
給与計算や退職金、企業年金制度の構築のほか、社会保障法令や労働関連法令に基づいて書類の作成等の仕事も行います。
労働関係のトラブルが起きた際には「個別労働紛争解決の促進に関する法律」に基づき、当事者の代理として解決策の提案をすることもあります。
また、もし顧問企業を抱えることが出来れば、独立してさらなる年収アップを目指すことも可能です。
社会保険労務士の平均年収
社会保険労務士の平均年収は勤務形態によって変わります。
企業に勤めていれば、自社の労働問題にしか携わることができませんが、負担もプレシャーも小さいです。
その一方、独立して開業した社労士は自分の営業成績によって年収が大きく変わって、稼げる社労士なら年収2000万を超えてもおかしくありません。
一応社労士の年収目安は
だそうです。
取得難易度:高
社会保険労務士試験には受験資格があり、受験対象者は
- 大卒、もしくは大学で62単位を取得済み
- 短大卒
- 高等専門学校卒
- 厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
- 社会保険労務士又は弁護士等の補助業務に3年以上従事した者。
さらに、試験に合格するには平均600~800時間の勉強が必要とされているため、難易度が高い試験となっています。
中小企業診断士
中小企業診断士は日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格です。
学習内容として、MBAに近いといわれていますが、さまざまな違いがあります。
まず、MBAは学歴であり、中小企業診断士は資格です。
また、MBAを学習する際、比較的に大手企業を事例にしたケースが多いというのが特徴です。
MBAは学歴ですので、大学やスクールによって合格する基準が違います。
中小企業診断士の学習に必要な費用は5~20万前後ですが、MBAの場合、最低でも100万以上かかりますので、かなりの差があります。
業務としては、会計や財務状況、マーケティング、組織形態などの視点から経営の分析を行い、問題点の洗い出しや課題の発見、そしてそのソリューションを提案する仕事を行なっています。
また、2005年12月の社団法人中小企業診断協会が行った調査の結果によりますと、中小企業診断士として独立している者の割合は27.6%となっています。
物事を論理的に捉え、問題点や課題を発見し、解決策を導き出せるような、論理的思考力のある人に向いている職業です。
中小企業診断士の平均年収
中小企業診断士も基本的に開業した事務所として働くことが多いので、クライアント企業の多さによって年収が変わります。
一般的な年収目安は
だといわれています。
取得難易度:超高
近年は試験がだんだんと難しくなっていく傾向が見受けられます。
平成28年のデータによりますと、一次試験は約17%、二次試験は約19%、最終的な合格率は4%未満と難易度がかなり高いです。
習得するには平均1000時間~1200時間が必要だといわれていますので、勉強時間の目安として二年間程度です。
大人気の資格でありながら、二年間勉強しても受からない人も多数いますので、取るのは非常に難しい資格と言っても過言ではありません。
1次試験、2次試験(記述と口述の2種)の合わせて3つの試験を受け、全体の60%以上の総得点を獲得しかつ40%未満の科目が一つもないことが合格条件となります。
経営に関する知識はもちろん、企業の経営状態に対する問題分析能力や提案力も必要となります。
公認会計士
公認会計士は企業の監査、会計、税務処理を行う仕事で、三大難関国家試験の一つになっています。他にも、企業へのコンサルティングを行うこともあります。
企業に属するのではなく、会計、監査対象の企業から独立しているという特徴をもち、企業運営において欠かせない業務を請け負っていることからとてもニーズの高い資格となっています。
公認会計士の平均年収
公認会計士は、中小会計士事務所で働くか、大手監査法人で働くか、独立して開業するかによって、年収が変動しますが、昔から高収入の職業として知られているため、基本的に高収入が保証されています。
年収目安として
となっています。
取得難易度:超高
公認会計士試験は医師国家試験、司法試験と並ぶ三大難関国家試験の一つであり、合格率は10%未満です。
必須科目として、「財務会計論」と「管理計算論」「監査論」「企業法」「租税法」の5科目があります。
一方、選択科目は「経営学」「経済学」「民法」「統計学」の4科目あります。
公認会計士の試験は短答式と論文式の2種です。
その試験に合格したうえで監査法人にて実務経験を2年積み、その後終了考査に合格してはじめて公認会計士を名乗ることができます。
ただ試験に合格するだけでなく、実務経験を2年間積まなければならないため、公認会計士までの道のりは非常に長いです。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは介護関連の資格となっており、その中でも医療、福祉、介護のすべての知識が必要とされる仕事です。
様々な介護業務の中核を担っており、要介護者から相談を受け、それに対して最適なサービスを選定し、要介護者が自立できるようにあらゆる方面からサポートを行っています。
加えて、他の介護士を管理するため、マネジメント能力も必要になります。
ケアマネージャーの平均年収
ケアマネージャーの就職先は基本的に福祉施設ですが、年収相場は各施設の所在地などによって変わってきます。
が目安となっています。
難易度:高
ケアマネージャーの資格を取得するには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。
そして合格後に実務研修に参加した後、ケアマネージャーとして登録されます。
資格試験の受験資格として、社会福祉士や介護福祉士、保健師等で5年間の実務経験を積んでいることが必要とされています。
合格率は10%台となっており、数字だけ見ても難しいですし、5年間の実務経験が必要なのでかなり難しいです。
その対策としては、やはり苦手分野を作らないことです。
試験問題は介護支援分野と保険医療福祉サービス分野の2分野から出題され、実務上経験されないことも問われる項目が多くあるそうです。
実務経験5年間が必須だから大丈夫だろうと考えずに、ケアマネージャーの資格を取ろうと思ったら、早めに準備をしましょう。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは個人の収入状況や資産、家族構成などの情報をもとに、教育、住居、老後といった、これからの人生計画に必要な資金計画を提案する仕事です。
一度提案したら終わりではなく、引っ越しや出産、転職等のライフイベントの度に、ライフプランニングの立て直しも行います。
ファイナンシャルプランナーのメリットとしては、他者の人生に貢献できることはもちろん、自分の人生においても有益な資格と言えるでしょう。
さらに、最近ではセミナーなどの活動を行うファイナンシャルプランナーが増えており、幅広く収益をあげることもできる、心強い資格となっています。
ファイナンシャルプランナーの平均年収
ファイナンシャルプランナーの就職先は様々です。
フリーライターとしてお金についての記事を執筆したり、保険代理店、銀行窓口で働いたりするなど、様々な働き方が可能です。
年収も勤務先によって変わりますので、一応目安として
が相場になっているようです。
難易度:中
ファイナンシャルプランナーはAFP(Affiliated Financial Planner)を取得することでなることができます。
難易度としてはそこまで難しくなく、3級であれば独学でもチャレンジすることができ、合格率は40%と高いです。
2級になるとファイナンシャルプランナーに関わる2年以上の実務経験が必要となり、3級の資格を取得している必要もあります。
したがって、まずは3級を取得し、そこから少しずつキャリアアップを目指していく方法がよいでしょう。
資格の取得も計画的に
30代の転職では、経験、未経験問わず今まで培ってきたスキルが何かが問われます。
全く新しい分野に挑戦するのではなく、自分の強みを見つけ出すことが重要です。
ご自身が今まで経験・勉強してきたことを活かし、自分の強みをさらに強化、アピールできるような資格を取得することがおすすめです。
また、30代での転職は、転職先の業務に深く関わっている資格を持たなければ有利にはなりません。
自分が転職した目的は何なのか、何をしたいのかを掘り下げた上で、どのような資格を取得するのか考えましょう。
また、どの資格に挑戦するかを年収だけで決めることもおすすめできません。
高難易度の資格はそれなりの収入につながりますが、多くの時間を勉強に費やさなければならなく、家族や趣味に使える時間がなくなりますので、相当の覚悟が必要です。
自分自身のワークライフバランスを考えて資格取得を行いましょう。