弁護士の給料って本当に高い?国際弁護士や社内弁護士は?

一般的に頭が良くて、給料も高いイメージのある弁護士ですが、実際のところどうなのでしょうか。弁護士事務所や企業内での役職、勤務か独立かによっても変わってくるのが実情のようです。

弁護士の給料

2019年の業界別、年収ランキングによると、弁護士の年収は第5位にランクインしています。ちなみに1位は医師で2位はパイロット、3位が大学教授、4位が税理士・公認会計士でした。どの職業も専門的な能力が必要とされる業界ですね。このランキングから分かるように、弁護士の年収は高いと言えるでしょう。額でいうと、1000万円前後といったところでしょうか。若いうちは700万円あたりから始まり、40代に1000万円を超えて、50代でピークを迎えます。一般的な生涯賃金が2億円代なのに対して弁護士は5億円前後の生涯賃金がありますので、やはり高給取りのイメージは間違っていないと言えるでしょう。ここまで、弁護士を平均した上での給料について解説してきましたが、弁護士といっても様々で、弁護士事務所に入る人と開業する人では差がつきやすいですし、渉外弁護士、社内弁護士、国際弁護士など、弁護士になってからも色々と選択肢があります。

資格がなくとも弁護士並みに稼げる職業

上記の通り、確かに弁護士の給料は高水準であります。しかし、弁護士になるというのはとても大変です。大学時代の友人でも多くの人が法律の勉強をしていました。大学時代に予備試験を合格している人もいましたが、それは本当にレアケースで、頭の良い人でも大学時代勉強し続けて受けるか分からないという状況です。実際、予備試験を諦めてロースクールに進学する人もいますし、そもそも法曹を諦める人もいます。それだけの時間と労力を費やして、平均年収1000万というのはコストパフォーマンスが悪い気もしてしまいます。というのも、貴重な大学時代に法律の勉強以外に没頭できませんし、多くの学生は塾にも通っていますからその分の費用がかかります。バイトをする暇などありませんので稼ぎもありません。その上、ロースクール進学の場合3年間無給、かつ学費を支払う必要があるわけです。弁護士になるまでには相当な投資が必要ということが分かっていただけたのではないでしょうか。もちろん、それだけの価値があると思うから目指す人が多いのでしょうが、見方によってはもう少し負担の少ない道もあると言えます。

例えば、外資系の銀行やコンサルティングファームです。代表的な外銀はゴールドマンサックス、モルガン・スタンレー、J.P.モルガン、メリルリンチがあり、外コンにはマッキンゼー、ボストンコンサルティング、A.T.カーニー、デロイトトーマツがあります。これらの企業の給料は1年目で700万程度あります。そして5年後には1000万円に到達することも考えられます。基本的に大卒1年目で入社した場合、20代で1000万円も手が届きます。当たり前ですが、これらの企業に入ることはとても難しいです。しかし、弁護士になる労力を考えると、こちらを目指すのは合理的にも思えます。転職も容易ですので、いろいろな業界で働くこともできます。

まとめると、弁護士になるには時間も労力もお金もかかりますから、なんとなくの憧れや収入の観点だけで目指してなれるほど甘くないということです。目指すのであれば、それだけの覚悟を持って勉強することが必須になります。

弁護士事務所

晴れて弁護士となれた方はまず弁護士事務所に入るのが一般的でしょう。日本全国多数の事務所がありますが、どの事務所に入ることができるかは自分の価値を高めるためにも、年収を高めるためにも重要です。ここでは、特に有名な弁護士事務所として五大事務所と呼ばれているものを紹介したいと思います。

西村あさひ法律事務所

最も大きい弁護士事務所で、五大事務所筆頭です。1966年に設立され、現在では日本の他にニューヨーク、バンコク、北京、シンガポールなど海外にも多くの拠点を持っています。インターンも積極的に行っており、世間一般での大企業といった感じでしょう。ネット上の口コミでは、1年目で1500万の給与をもらっている方もいました。

アンダーソン・毛利・友常

1952年に設立された法律事務所です。海外の展開先はアジアのみとなりますが、数々の賞も受賞しており、評価の高い事務所です。

長島・大野・常松法律事務所

長島・大野法律事務所と常松簗瀬関根法律事務所が2000年に合体してできた法律事務所です。

TMI総合法律事務所

六本木ヒルズにオフィスを構えています。他の事務所に比べると若干劣っているとみられることもあるようですが、外国法事務弁護士が多く在籍しているなど、独自の強みを持っており、高レベルの事務所であることに変わりはありません。

森・濱田松本法律事務所

森綜合法律事務所と濱田松本法律事務所が合体してできた事務所です。

以上の5つが有名な事務所で、それ以外とは規模が大きく異なります。これらの事務所は激務かつ高給と言えます。

国際弁護士

国際弁護士とは、一般的に海外の弁護士資格を持っている人のことを言います。そのため、国際弁護士という資格があるわけではありません。アメリカで弁護士の資格を取るには1000万円近くの留学費がかかりますし、英語で弁護できるだけの語学力が求められます。帰国子女であれば英語はペラペラ、というのは半分正しく半分間違っています。確かに、現在は留学経験のある方も多くいます。しかし、日常生活を英語で暮らせるのと、学術的なトピックに関して議論するのでは求められるものが全く違います。英語が自由に操れる上で、記憶力や論理的思考力など頭の良さが求められます。これだけのスペックを持つ人はなかなかいませんから、多くの日本人の弁護士とは違った案件を担当できたり、海外とのパイプを持つことができたり、給料が高めだったりと、違った経験ができます。デメリットとしては、時差に影響されて多忙になりがちということが挙げられます。

海外にも興味がある場合は、とてもやりがいを感じられるでしょうから、国際弁護士を目指すのもよいのではないでしょうか。

渉外弁護士

渉外弁護士は、外国とのビジネスに関する案件を扱います。大きく分けてインバウンド関連とアウトバウンド関連の事業があり、M&Aや業務提携、販売契約、ライセンス契約などが担当となります。インバウンドは現在の日本ではよく聞く言葉ですのでご存知と思いますが、海外から日本へ何かが入ってくることを言います。弁護士事務所の場合、外国企業が日本に参入するにあたって法律面でサポートするというイメージです。

クライアントは外国企業になるので、英語力は必須です。契約書の英語は日常会話とは全く違いますから、よりアカデミックな知識をつける必要があります。

年収は低くても1000万円ほどですので、弁護士の中でも高水準です。大手渉外事務所のパートナーになると1億円超えも夢ではありません。

注意点としては、司法試験に合格する前から採用がスタートするということです。サマークラークと言われる、弁護士事務所の行う選考に参加し、そこで優秀であると認められた場合、採用されることになります。そのため、激務と引き換えに高い給料を得られる渉外弁護士になるという決断を早い段階からすることが求められます。なお、基本的に中途採用はありません。

社内弁護士

別名企業内弁護士とも言われ、近年のグローバル化やコンプライアンス遵守の流れによって需要が増えています。多くの社内弁護士を雇用する企業としては、外資系の企業が多く挙げられます。そして、それらの多くは給与水準も高くなっています。ゴールドマンサックスやメリルリンチ、モルガン・スタンレーといった外資系銀行がそれらの企業です。課長クラスの役職でも2000~3000万円ほどはもらえ、その上の役職では3000~4000万円、1番上の役職では4000~5000万円が年収となります。外資系ですので、日本企業よりもリストラのリスクは格段に高いですし、定年まで雇ってもらえるかは分かりません。IT企業では3000万円程度が平均値となります。外銀ほど高くないかわりに外銀ほど忙しくはないようです。IT企業の例としては、Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoftなどです。どの企業も時価総額でトップを走る巨大企業ですね。また、ヘッジファンドの場合だと3000~4000万円の給与水準であり、外資系の保険業界では2000万円程度です。保険業は低めに設定されていますが、激務とは言えない環境かつ、定年まで働けることも多いようです。その他多くの外国資本の企業も同程度の給与水準であり、金融、IT以外の業界では驚異的な額は得られないかもしれません。高い給料を取るのか、安定を取るのか、これは常にトレードオフと言えます。概して見ると、コスパはあまりよくないという意見も見かけます。

もし社内弁護士を目指すのであれば、外資系を選ぶべきでしょう。日系では一般の職員と給料が同じですので、待遇が良いとは言えません。

独立弁護士

独立弁護士は医師でいう開業医のような立ち位置です。主に、法律事務所で10年以上働いた弁護士が独立することでなります。独立して多くの顧客を獲得できた場合、報酬がほぼそのまま自分の給料に直結するので、年収が上がることが考えられます。勤務弁護士の場合は弁護士事務所に多くが取られてしまいますが、それがなくなるということです。しかし、医師と事情が違うのは、弁護士は世間の需要がそこまで高くなく、人材が不足していないということです。地方が人不足なのはどちらも同じですが、都内で顧客を獲得するのは簡単ではありません。大手の企業は基本的に大手の弁護士事務所と契約していますので、1件あたりの報酬は多くない中小企業が主な取引先となります。勤務弁護士のような基本給もありませんので、自分の実力がそのまま収入に反映されると言えるでしょう。そのため、勤務弁護士より収入が減ることも考えられます。

加えて、自分で事業を運営することになれば、経費で落とすということもできるようになります。自宅の光熱費をはじめ、利益を上げるために必要と考えられる出費は全て経費で落とせば、納税額を減らすことができますので、節税効果が期待できます。これは一般人にはなかなかできないメリットと言えます。

お金の観点以外で良い点は、上司がいなくなり、自分の意思で行動できるということでしょうか。何かをやらされたり、雑用のような仕事を嫌々やることは少なくなるので、ストレスは感じにくいと考えられます。もちろん、独立しても人を雇うことができなければ事務作業も自分で行うことになりますが…
まとめると、自分の好きなように働き、実力主義の賃金体系を望む野心的な方は独立弁護士を目指すのがよく、企業に縛られながらも安定した収入と社会保障を手にしたいという方は勤務弁護士になるのがよいということです。

気の合う弁護士仲間がいれば、2人で一緒に始めるということもできます。リスクを低く抑えながらも、多くの案件を獲得できるかもしれません。

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